溺愛されてもわからない!

そして昨日の続き。
朝から半泣きになりながらのお勉強。
もう10時でグッタリ。

お母さんがリンゴをむいてくれたので5分休憩。

朝の話が気になってしかたない。

「田中さん?」

「はい」

「一夜はずっと和彦さんの」

「お父さん」

細けーな。

「お父さんの跡を継ぐって言ってたの?」
そう聞くと
田中さんは深く息を吐く。

「はっきり自分から言ってませんが、自覚はあったと思います」

「月夜じゃなくて?こんどお母さんに赤ちゃんが生まれるから、もしかしたらその子が凄い才能があって跡を継ぎたいって思うかもしれないよ」

「一夜さんも才能はあります。今の時代は頭と運です」

そうなのか……一夜が決めたのならいいけど……婚約って、一夜がお嫁さんをもらうって話だよね。不思議に気持ちがもやっとしている。だって知らない人とだよ。好きな人ならいいけど、誰でもいいって雰囲気だったから、それは違うと思うんだよ私。

私も黙っていたら田中さんは「それなら、すみれさんが跡を継ぎますか?誰かとお見合いします?婿をとりましょうか?」って言われて、私は大爆笑。ないわーないない。

「それじゃ私が田中さんのお嫁さんになって、田中さんが婿になるのはどうかな?」

ウケを狙って自分で言って自分で爆笑するけど、田中さんは笑ってくれなかった。実に真面目で怖い顔をしている。

ごめん。嫌だった。
冗談でも嫌だよね
こんなおバカな私とそんな冗談じゃない。

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