溺愛されてもわからない!
家に入るとお母さんが台所に立っていた。
「寝てなくていいの?大丈夫?」
「大丈夫。晩ご飯ありがとう」
「月夜とお父さんが邪魔じゃなかった?」
ふたりともお母さんが大好きだから
べったりくっついてるんだもの。
「月夜君はお母さんのベッドで寝ちゃった。和彦さんは今は一夜君の部屋で話をしてる」
一夜と?もしかして婚約の話?
不安そうに私が黙ると「あまり感情的にならないように言っておいたから、大丈夫」と、笑顔を返す。
「感情的?って?」
「一夜君の帰りが遅いでしょう。前から遅かったけど、最近はほぼ居ないから和彦さんのお説教。しっかりしてるけど、まだすみれと同じ高校生だから和彦さんも心配なの」
「お父さんは心配性だから」
私とお母さんは顔を見合わせ笑う。
なんかお母さんとのツーショットが懐かしく新鮮。
「大切な人が増えるほど、心配事も増えるの」
「お父さんマジメだから」
「だから金融業にピッタリなのね」
ひとり納得するお母さん。
その天然は都会に出ても安心の安定感。
金融業じゃなくて極道業です。
まぁいいか
お母さんはこの家のお姫様だから、和彦さんが守ってくれるから何でもいいよ。
「すみれはどうしたの?外に出てたのでしょう?」
優しい声で、鋭いとこ突いてくるのねお母さん。