溺愛されてもわからない!

「友達が遊びに来て、すぐ帰った」

「こないだの男の子?」

「うん」

「すみれの彼?」

「まだ彼じゃない」

「すみれはその子が好きなの?」

突っ込むなぁ。

「好きだけど」

「だけど?」

私の返事を待つ笑顔が怖い。

「逃げるね」
私は笑ってあとずさり、すると背中から

「逃げてばかりはダメよ」ってお母さんの声がかかる。

えっ?おそるおそる振り返ると

「『だけど』の意味を考えて。自分の気持ちを偽っちゃダメよ」

「……意味わかんない」

「うーん。お母さんもわかんない」

お母さんはゆっくり私に近寄って軽くハグ。

「急に生活が変わってごめんね。弟か妹もできちゃうし」

気にしていてくれたんだね。
いつもお母さんは私を気にしてくれているのに
私こそ勝手にお母さんに見捨てられたような気持ちになって、勝手に凹んでたりしてたのに……。

「ぜんぜん問題ないよ。家族を増やしてくれてありがとう」

大好きだよお母さん。

そして『だけど』の意味を少し考えてみるね。

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