溺愛されてもわからない!
「疲れた」
「自分の部屋で寝たら?」
「僕の抱き枕になって」
「ヤダ離して」
「やーだー」
一夜は楽しそうに笑って自分の腕に力を入れる。
その腕の中
私は甘い息苦しさに身動きできない。
「夢とどう?」
「さっき会って話した」
「へぇーっ」
「今日ね、雫さんにきちんと話をしたの。そしたら『私をふたりで笑ってた?少しの間、私達も離れよう』って言われて……」
「それ当然。それで落ち込んだなんて、バカな話するんじゃないだろうね」
どうしてこの人は、私の行動を読んでいるんだろ。
しかも全否定だし。
私が深く息を吐くと
一夜は「それで心配して夢が来たの?いいヤツじゃん」
「うん。いい人だよ」
「すみれちゃんは夢が好きで、気持ちが通じあったんだろ?」
「そうだよ」
「よかったね」
一夜の唇が私の額に重なりそうなので、身体をよじって離れようとするけれど彼の力は弱くならず、余計に強くなるばかり。
「さっき、夢君にキスされそうになった」
「へーっおめでとう」
「でも避けた」
「なんで?」
「わかんない」
「バカなすみれちゃん」
一夜の唇が私の首筋に重なり、逃げたい気持ちと素直に目を閉じたい気持ちが混ざり合って泣きたくなる。