溺愛されてもわからない!
「すみれちゃんは夢が好きなんだろ」
「好きだよ」
「夢はいい奴だから安心だ。ふたり仲良くね、クリスマスにヤッちゃえば?」
「一夜は簡単すぎる」
「簡単だろ。すみれちゃんは夢と仲良くして、僕は可愛い婚約者と仲良くする」
「一夜はその子を好きになる?」
「好きになる」
その言葉に
心臓がギューっとつかまれた気持ちになった。
「私より好きになる?」
「すみれちゃんには夢がいるし。お似合いだよ。仲良く頑張りな」
優しい腕の中とは対照的な冷たい言葉に、なぜか本当に涙が出て来た。
一夜の唇が私の頬に触れ
私の涙を感じて自分の手の力をゆるめ
私を解放する。
「一夜は私が嫌い?」
絞り出すような声を出して聞くと
「泣く子は嫌い」って返事が返る。
「一夜のドS」
悔しくて涙を拭いてにらみつけると
「だから僕はドMだって」そう言って笑い
だるそうな身体をベッドから起こし、私を見下ろす。
「友達に話をしてスッキリして、大好きな夢にキスを迫られたんだろ?どこに問題があるの?すみれちゃん幸せじゃん」
「今、どうして私を抱きしめたの?」
私も身体を起こし
一夜に向かって問いかける。
するとさっきまでの軽い表情が消え
真剣な顔で私に「……もうしない」って言う。
「絶対……しないでね」
売り言葉に買い言葉。それを受けて一夜は「絶対しない。おやすみ」って、私に背中を向けて軽く手を上げ部屋を出て行ってしまった。