溺愛されてもわからない!
気まずい時間を過ごし
学校が終わり
寂しげに席を立とうとしていたら
愛美ちゃんが緊張した顔でやって来て
「今日は放課後講習サボるから、一緒に帰ろうか?」って言ってくれた。勇気を出して言ってくれたのね。ありがとう。でも変に愛美ちゃんまで巻き込みそうで怖い。
「真面目な愛美ちゃんがサボるなんてとんでもない。問題ないから大丈夫。また明日ね」
作り笑顔で愛美ちゃんに言い、ひとりぼっちで背中を丸めて帰ります。
あぁ
自分の机から
玄関までの距離が長く感じる。
雫さんが落ちつくまで
ずっとこんなんだろう。
外の空気が冷たい。
「あーぁ」ため息をして歩き出すと
「すみれ」と、頭の上から聞こえる声。
「一緒に帰ろう」
夢君は笑顔を見せて、私の隣に並んでくれた。
それだけでジワリくる。
どんだけ心が弱ってる?
「前途多難ってヤツ?」
「夢君、難しい言葉知ってるね」
「すみれより賢いから」
「はいはい」
たしかに
夢君はクラスでお勉強頑張らない系の人だけど、なぜか成績は良い。ズルいなぁ。