溺愛されてもわからない!

「夢君……あの……」

「呼び捨てでいいよ」

「夢?」

「すみれが好きだ」

苦しそうな声を出して彼は言う。
私は夢君の顔をただ見上げる。

「井口の事は俺にも責任はある。すみれが学校で孤立しそうなら俺が守る」

「気持ちだけもらう。すぐ落ちつくから大丈夫」

「すみれの口癖は『大丈夫』だけど、それは全然大丈夫じゃない」

鋭い指摘。

「クリスマスはふたりで過ごしたい。ばぁちゃんは伯母さんの家に泊まりに行くから、家に来て欲しい。ふたりで過ごしてから……わかる?その続き?」

「わからない」

わかるけど
わかりたくなくて
わからない。

どうして自分がわかりたくないのか
それもわからない。

「大切にする」

夢君は自分に言い聞かせるように私に言い「電話するから」って、先に走って去ってしまった。



幸せなはずなのに

タメ息が多いのは

なぜだろう。




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