溺愛されてもわからない!

冬の風は冷たい。

田中さんから借りたニットが温かい。
気のせいか火薬の匂いがする……気のせいにしよう。

どこに行こうか。
携帯はポケットに入ってるけど、お財布持ってないからマックにも入れません。

ふらふら歩いて時間をつぶそう。
そんな時に限って
時間って遅いんだよね。

彩里ちゃんはいつ帰るのだろう。
田中さんに彩里ちゃんが帰ったら連絡してもらおうかな。彩里ちゃんが家に居るうちは帰りずらい。
あぁ失敗
お財布忘れた。
ブックオフでも入ろうかな。

近所をフラフラしてると
小さな喫茶店でおばさんがガラスを拭いていた。
私も小柄だけど
おばさんも小柄。
一生懸命手を伸ばしてのガラス拭き。

「こんにちは」

「あら、すみれちゃん。こんにちは」

ご挨拶して近寄ると
お客さんが数人ほどお店に入る。

困った顔するおばさんから、私はガラス拭き道具を受け取りお掃除のお手伝い。おばさんは中に入って接客。

めでたし。めでたし。

私は一生懸命ガラス拭き。

動いてる方が気持ちが楽。




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