溺愛されてもわからない!
田中さんに「ありがとうございました」ってカーディガンを返し、居間に行くと一夜以外の家族がそろってた。
なんか
みんなうっとり目線?
「おかえりお姉ちゃん。ねぇねぇ、彩里ちゃんってすごく頭いいんだよ。英語ぺらぺらなんだって、カワイイよねーお父さん」
洗脳月夜。
「そうだね。可愛くて大人しくて頭もいいね」
洗脳組長。
「そうね。可愛いわ」
洗脳椿さん。
みんなで洗脳されてりゃいいよ。
私も洗脳されたら楽なのに
「お父さん!」
私はデレーっとした組長の前に立つ。
和彦さんは目が覚めたように背筋を伸ばし、私を見上げた。
起きなさい組長!
目を覚ましてちょうだい。
「私、バイトします!」
「はいどうぞ!」
勢いで言うと
勢いで返事。
可愛い彩里ちゃんにデレデレしてなさい。
私は私で勝手にさせてもらいます。
「着替えてくるね」って二階に行こうとしたら「すみれ?」って、お母さんが心配そうに声をかけてきた。
階段で振り返ると
不安そうな6つの目が私を見つめてる。