溺愛されてもわからない!

「彩里さんが気にしてたの」

その名前
聞きたくないなぁ。
うんざりしてお母さんを見つめると
お母さんは厳しい顔で私を見る。

「『すみれちゃんと仲良くしたいけど、私はすみれちゃんに嫌われてる』そう言ってたの」

バイトが決まってご機嫌気分だったのに
一気に落ちた。

めったに
人を嫌わない私だけど
今回はもうムカつくわー!
だって
初めて会ってだよ
今日初めて会って
こんなウソつかれるって何?

「違う。彩里ちゃんが私を嫌ってる」
月夜みたいに
ぷーっと頬をふくらませ答えたら

「すみれ、ちょっとおいで」

和彦お父さんが私を手招き
その手は優しいけど
顔が真剣だ。

みんな私を疑ってる

可愛い彩里ちゃんを信じてる。

「『言った』って言えば満足?私は嫌い。あの子が嫌い。でも関わらないから問題ない。あの子が来る日は家に居ないようにする!それでいいんでしょ!」

信じればいいんだ。
私が悪いんでしょ。

もういいよ。

雫さんにも家族にも
誰にも信じてもらえなくていい。

もう

どうでもいい。


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