溺愛されてもわからない!

背中越しに『ご飯は?』ってお母さんが言い、私は『いらないっ!』って返事をして部屋に飛び込んだ。

最低。

あの子も悪いけど
自分が最低。

ヤケになって
あんな言い方して
ごめんお母さん。

きっと怒ってる。
きっとあきれてる。
きっと……お父さんは後悔してる。

愛する人に、こんな性格の悪い連れ子がいたなんて……連れて来なきゃよかった……って、田舎に置いてきたらよかった……って、どこかに預ければよかった……って。

どうして
こうなんだろ私。

せっかく家族が増えたのに

反省。

タヌキちゃんはお山に帰りたい

深いため息をして反省。

すると
スマホが鳴って
夢君からの着信を知らせる。

指を滑らせ「はい」って低い声を出すと『テンション低っ!』って叫ばれてしまった。

たしかに

低いです。ズズズンと墜ちてます。

『バイトが早く終わったから、すみれの声が聞きたくて電話した』

「ありがとう」

『どうした?』心配そうな声が涙を誘う。

「夢君……私って……最低なヤツだ」

私は彩里さんの話はせず
自分がお母さんとお父さんにキツイ事言って、きっとお父さんは『こんな子連れて来なきゃよかった』って思ってるって、自分の気持ちを涙声で素直に言うと

夢君は冷静に『すみれも義理のお父さんに遠慮がなくなって、家族に近づいてきたって思えばいいじゃん』と、目からウロコ的な発言をしてくれた。

そうなのか?
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