溺愛されてもわからない!

電話を終わらせた時
ノックの音が聞こえて「オレだー」と、偉そうな幼稚園児の声がして扉を開けると、月夜がサンドイッチとアイスティーをトレイに持って立っていた。

「お母さんが持って行ってって」

恥ずかしそうに私にトレイを押し付ける。

「ありがとう」

ありがとうお母さん。

「お姉ちゃん。ハンコーき?」

ハンコーき?あぁ反抗期か。イントネーションわからなかった。

「お父さんとお母さんが言ってた『ハンコーき』って、それって病気?」

「みたいなものかな。すぐ治るゴメン」

「ふーん……食べて早く寝ろよ。冷えピタいる?薬のんだ?」

ちょっと違うけど。
月夜のいたわりが嬉しい。

「大丈夫。お父さんとお母さんに謝っておいて。すぐ治るからさ」

「無理すんなよ。病院行けよ」

帰ろうとする月夜の腕を取って「一夜は?」って聞いたら「おでかけ」って返事。

居ないのか。

私は月夜に礼を言い
一夜の部屋をジッと見る。

こんなに近いのに
とっても遠く感じるよ。

婚約者の存在はとっても大きいのにね

もう少し
あと少し
私も大人になって
進まなきゃいけないのかな。

思春期&反抗期のタヌキちゃん。

頑張ろう。


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