溺愛されてもわからない!
すみれちゃんがいるから来たって言ったのに
カウンターでは私を無視して
彩里ちゃんは一夜にベタベタ。
一夜も一夜でサラッとそれを受け止めてる。
さりげなーく
一夜の肩に触ったり
一夜のスマホを覗いたり
恥ずかしそうに笑ったり
どこから見ても
お似合いのふたり。
「美味しいね」
幸せそうな彩里ちゃん。
ふと
自分の顔がステンレスのコーヒーポットに写る。
うわぁ嫌な顔。
こんなブサい接客のおねーちゃんがカウンターの中に居るなんて、これはダメだ。
笑顔笑顔。
「食後の飲み物サービスするよ。何がいい?」
そう聞くと
「コーヒーがいいなぁ。一夜さんは?」
「僕も同じでいいよ。ありがとう、すみれちゃん」
一夜はやっと私だけを見て、お礼を言ってくれた。
やっとこっちを見てくれた感に、私も作らない笑顔を見せる。
家でもあまり話をしてないよね
私達。
兄妹なんだから
普通に話をしていいのに。
おでかけばかりの一夜。
最後に私のベッドでギュッと抱きしめられたのは、私の想像だったのかも。