溺愛されてもわからない!

すみれちゃんがいるから来たって言ったのに
カウンターでは私を無視して
彩里ちゃんは一夜にベタベタ。

一夜も一夜でサラッとそれを受け止めてる。

さりげなーく
一夜の肩に触ったり
一夜のスマホを覗いたり
恥ずかしそうに笑ったり

どこから見ても
お似合いのふたり。

「美味しいね」
幸せそうな彩里ちゃん。

ふと
自分の顔がステンレスのコーヒーポットに写る。

うわぁ嫌な顔。
こんなブサい接客のおねーちゃんがカウンターの中に居るなんて、これはダメだ。

笑顔笑顔。

「食後の飲み物サービスするよ。何がいい?」
そう聞くと

「コーヒーがいいなぁ。一夜さんは?」

「僕も同じでいいよ。ありがとう、すみれちゃん」

一夜はやっと私だけを見て、お礼を言ってくれた。

やっとこっちを見てくれた感に、私も作らない笑顔を見せる。

家でもあまり話をしてないよね
私達。

兄妹なんだから
普通に話をしていいのに。
おでかけばかりの一夜。

最後に私のベッドでギュッと抱きしめられたのは、私の想像だったのかも。




< 308 / 442 >

この作品をシェア

pagetop