溺愛されてもわからない!

家に帰ったらすぐ
お父さんの書斎に呼ばれた。

本がいっぱいの書斎
幹部のお偉いさんからいただいた
ムダにデカい【仁義】という書がドーンと飾っていて
お父さんはその下
イタリア製の高そうな椅子に座り
静かに本を読んでいた。

「おかえり。バイトお疲れ様」
本から目を離し
私を近くのソファに座らせようとするけれど
私は首を横に振って軽く拒否。
お父さんは苦笑いして私の顔をジッと見る。

きっと
今日の事だろう。
私が彩里ちゃんの高そうなニットに熱いコーヒーをかけ、泣かせた話。

幹部の娘さんって言ってたから、お父さんのお仕事にも関係あるのだろう。

私は悪くないけど
私が悪い。
それは……それでいい。
この家に住む娘の運命って言えば大げさだけど、大げさな世界だから。

「お父さんごめんなさい」
どっちにしろ迷惑かけたのは私だ。
お母さんと私を拾ってくれて
学校まで行かせてもらってるんだもん
迷惑かけてごめんなさい

でも
うつむいたら涙がボロボロ

私……悪くないよ
コーヒーかけてないよ

大きな声で叫びたくなるから
ギュッと痛いくらい
自分の唇を噛んで我慢する。
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