溺愛されてもわからない!

すると

「すみれ」って優しい声で名前を呼ばれて
ゆっくり顔を上げたら

お父さんは笑ってた。

「すみれは悪くないって、みんなわかってるから」

「……お父さん」

「お父さんもお母さんも一夜も最初からわかってる。彩里さんが来た日から、彩里さんはすみれに敵対心を持っているのもわかってる。どんなに可愛くて勉強ができても、気持ちが子供なんだ」

じわる
じわじわと
さっきまでと違う涙が出てきそう。

「すみれは人をバカにしない、優しくて真面目な子ってわかってる。だから気にするんじゃない」

「はい」
ダメだ
涙ポロポロ出るし。
この家に来てから泣きすぎ。

「嫌な想いをさせて悪かった。よく謝ってくれたね、えらかったよ」

「田中さんから聞いたの?」

こらえきれなくなって
テーブルからティッシュを何枚かとると、お父さんの目も赤い。
血は繋がってないのに
私達は似てる。

お父さんにボックスティッシュを渡し、そう聞いてみるとお父さんは首を横に振る。

「一夜から電話で聞いた」

「一夜が?」

互いに涙目になりながら顔を合わせる。

「そう。一夜から聞いた」

一夜が……。

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