溺愛されてもわからない!

ショッピングモールを出ると
もう6時半。

ヤバっ!早く帰らなきゃ!

自分の荷物とプレゼントを抱え
急ぎ足で冬の街を歩く。
ピヨピヨモナカが大きいんだよね。
頑張って歩こう。

一生懸命に寒い中を歩いていると
コロコロコロって……足元にリンゴが転がってきた。

ん?リンゴ?
ひとつ手に取ると
大きな通りの横の路地。
暗い路地から「すいませーん」って若い声が聞こえた。

「そこのお姉さーん。転がったね、手が離せないので持って来てもらえる?」

レストランの奥の路地だから
業者さんかな
白いバンがギリギリ停まってる。

私はリンゴを持ってそちらに向かうと、ポケットから着信音。

こんな大荷物&リンゴで電話かよっ!
手袋を脱いでスマホを見ると

雫さん!
かなり久し振りに雫さんの文字がスマホに表示された。
私は路地に向かって歩きながら
心臓をドキドキさせて電話に出ると

『すみれ?』って、私の名前を呼ぶ懐かしい声。

「雫さん?」

『うん。すみれ今どこにいるの?』

電話口でもわかる
雫さんの焦った声。どうしたのかな?
でも嬉しい。
電話をくれてすごく嬉しい。



< 321 / 442 >

この作品をシェア

pagetop