溺愛されてもわからない!
「すみれごめんね。ごめんね私が悪いの。ごめんね」
泣き崩れた雫さんを田中さんが受け止めた。
長い綺麗な髪が揺れている。
「違うよ。井口さんのおかげで助かったんだ。すみれの家族として礼を言うよ、ありがとう」
お父さんが優しく雫さんに言う。
何が
どうして
どうなったの?
「すみれも目を覚ましたから安心だ。井口さんも水無月君も遅くまで悪かったね、田中に送ってもらって帰りなさい。椿さんも一度帰って身体を休めて、また明日来よう」
お父さんが指示を出すと
誰も逆らえず
名残惜しそうに今日は解散となる。
いや
色々と聞きたい事があるんですけどっ!
「すみれが心配でずっと起きてたんだけど、また明日連れてくるから」
お父さんが月夜を軽々と抱き上げてそう言った。
月夜にまで心配かけたんだ。
ごめんね。
「明日の朝に来るね」
お母さんが私の手をもう一度握ってそう言い
「私も明日、学校が終わったらすぐ来る」
雫さんが泣きながら言い
「ゆっくり休んで。今、医者を呼ぶから」
お父さんが私の頬を撫でて言い
「すみれ……」
夢君が私の顔をジッと見つめる。
澄んだ綺麗な目
見事な赤い髪。