溺愛されてもわからない!
張り詰めた空気がプツンと切れたのは
雫さんの綺麗な目から
涙がポロっと流れたから
「全部私が悪いの。私が意地を張って、すみれとすぐ仲良くしなかったから。ごめんなさい」
「違うよ。雫さんだって嫌な気持ちになったんだもん。私は時間をかけてもいいから、また仲良くしたいと思ってた」
「すみれは悪くないのに」
「雫さんが私を助けてくれたんでしょ。ありがとう」
「すみれ」
私まで泣いちゃう。
もう泣いて全部終わらせようよ。
ふたりで散々泣いてから
顔を合わせて笑ってしまう。
うん。仲直り。
「もう堂々と夢と一緒にベタベタしていいよ」
「ベタベタって何?」
笑っちゃう。
こうやって笑えるって嬉しいね。
「もう私は夢をあきらめた。夢はすみれが好きで、すみれも夢が好きなんでしょう」
軽く言われたけど
私は返事ができない。
黙っていたら
ノックの音が聞こえて
ご本人が現れた。
背の高い赤い髪の男の子。
パッと見は怖いけど
目が澄んでいて綺麗な顔の男の子。
「井口の方が早かった?」
夢君の低い心地よい声。
「邪魔だから帰ってあげる。もう仲直りしたからいいの。すみれは私の親友だもん」
雫さんは半分照れたようにカバンを持ち、夢君と交代みたいに部屋を出て行った。
さて
今度は夢君と私のツーショット。
「身体は?」雫さんが座っていたイスに座り、そっと手を伸ばして私の頬を撫でる夢君。
その手は思いやりと愛情に満ちている。