溺愛されてもわからない!

張り詰めた空気がプツンと切れたのは
雫さんの綺麗な目から
涙がポロっと流れたから

「全部私が悪いの。私が意地を張って、すみれとすぐ仲良くしなかったから。ごめんなさい」

「違うよ。雫さんだって嫌な気持ちになったんだもん。私は時間をかけてもいいから、また仲良くしたいと思ってた」

「すみれは悪くないのに」

「雫さんが私を助けてくれたんでしょ。ありがとう」

「すみれ」

私まで泣いちゃう。
もう泣いて全部終わらせようよ。
ふたりで散々泣いてから
顔を合わせて笑ってしまう。

うん。仲直り。

「もう堂々と夢と一緒にベタベタしていいよ」

「ベタベタって何?」

笑っちゃう。
こうやって笑えるって嬉しいね。

「もう私は夢をあきらめた。夢はすみれが好きで、すみれも夢が好きなんでしょう」
軽く言われたけど
私は返事ができない。

黙っていたら
ノックの音が聞こえて
ご本人が現れた。

背の高い赤い髪の男の子。
パッと見は怖いけど
目が澄んでいて綺麗な顔の男の子。

「井口の方が早かった?」

夢君の低い心地よい声。

「邪魔だから帰ってあげる。もう仲直りしたからいいの。すみれは私の親友だもん」

雫さんは半分照れたようにカバンを持ち、夢君と交代みたいに部屋を出て行った。

さて
今度は夢君と私のツーショット。

「身体は?」雫さんが座っていたイスに座り、そっと手を伸ばして私の頬を撫でる夢君。

その手は思いやりと愛情に満ちている。

< 343 / 442 >

この作品をシェア

pagetop