溺愛されてもわからない!

「ごめんね心配かけて。もう元気だよ」

「そっか……」


それで
会話は途絶えた。

何も話をしない私達。

だって
次の言葉はきっと
あまりいい話じゃないから。

「一夜が好きなんだろ」

夢君に言われて
自分の心が苦しくなる。

「夢君、私は……」

「呼び捨てで、呼んでくれなかったね」

「ごめん」

本当だね。
最初は呼びたかったのにね。

だって
間違いなく私は夢君を好きだったもの。
ずっと『夢』って、呼んでみたかったよ。

男らしくて
優しくて
いつも
こんな私の事を想ってくれて
誠実で最高の人なのに

どうして私は……。

「家の前で、キスを拒否されてから考えてた。もうダメだ……って」

「あれは……」

「昨日、すみれは一夜の名前を呼んでいた。俺の事が好きなら、すぐ俺の名前が出るだろう」

「……ごめん」

たしかに

そうだよね……ごめん。

ごめんしか言えない私は最低だ。
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