溺愛されてもわからない!

生クリームが美味しくできたから
ちょっと月夜に食べさせたいな
冷蔵庫の苺を2.3個こっそりいただき、ガラスの器にのせて台所から身体を伸ばすと……月夜がいない。あれどこに行った?

「すみーれちゃん」
月夜を探してたら
背中に一夜がベッタリ貼り付く。

「ちょ!」
「ちょ?」

ジタバタと身体を動かし
貼り付いた一夜を振り払おうとするけれど、一夜はしっかりギュッと自分の両手を私の前で絡め、甘えた仕草で抱きしめる。

「誰かに見られるっ!」

「誰も見ない」

「つっ月夜は?」

「椿さんを追って事務所に行った」

「でもすぐ戻るよ」

「戻らない」

一夜の髪が首筋に当たってくすぐったいって思ったら、髪じゃなくて唇だった。

「ダメだよ」

振り返る拍子に今度は私の唇にキス。

もう許して
やりたい放題でしょう。

「一夜」

「これも美味しそう」

一夜の指が生クリームをすくい、私の唇にそっと重ねた。

「きっと甘いよ」

ダメだ……抵抗できない。

生クリームごと一夜は私の唇を味わい
満足そうな笑顔を見せる。

「甘いね」

一夜の声も仕草も顔もセリフも甘すぎる。
溶けてしまいそう。

< 381 / 442 >

この作品をシェア

pagetop