溺愛されてもわからない!
「何度言っても、言い足りない」
「うん」
「すみれちゃんが好き」
『すみれちゃん』から『すみれ』になるのは
きっと20歳の朝だね。
「私も大好き」
キスとキスとキス
甘いキ……視線を感じる。
ふと横を見ると
あぁそうか
こっちから丸見えって事は
向こうからも丸見えって話ね。
怒ってる怒ってる
お父さんが真っ赤になって怒ってる。
お母さんは微笑んで
月夜の目を手でふさぎ
田中さんは綾夜芽ちゃんを抱きながら
私達を見てうなずいていた。
「一夜?」
「ん?」
「みんな……見てる」
ベンチの上で動きが止まる私達。
月夜と綾夜芽ちゃんの前では、理想的な兄と妹でいなければいけない。
それも条件のうち。
家族なんです。