溺愛されてもわからない!
「はいはい」
感情のない低い声。
王子様顔には似合わないよ。
一夜は私の手を取り
普通にベンチに座らせてから
「妹であり彼女であり婚約者にしよう」
そう言って
白いシャツのポケットから何か取り出す。
それはベルベットのハートの形をした箱で、開くと指輪が入っている。
「バイト代の三ヶ月分」
ふざけたように口にして
そっと私の左手を奪い
薬指に輝かせる。
シルバーのリングの上に紫色の石が五つ
小さな花びらのような形をして並んでいた。
「スミレの花?」
あまりにも嬉しい驚きで声が震える。
可愛いデザインだけど石の色が上品で、とっても綺麗。
「感想は?」
「あ……うん……」
「あ?って?」
「……うん……」
「いらない?」
「いるいるいる!絶対いる!」
「いや怖いって、その顔」
自分の薬指を何度も見惚れてしまう。
初めての指輪
言葉にできないくらい嬉しい。