溺愛されてもわからない!
着物なんて贅沢で
レンタルでいいし
買ってもらったリクルートスーツもあるから
それを着ようと思っていたら
溺愛組長が勝手に購入。
「高いのにもったいないっ!」ってお父さんに怒る私。
お父さんに怒れる立場になりました。
佐藤すみれ進化してます。
「綾夜芽ちゃんにも着せるから」
お父さんはビクビクしながら反論。
ムダはないと私に力説。
そう言われると……そうかもって
納得というか丸め込まれた。
お父さんも私を丸め込む方法を覚えたかな
こちらも進化してます。
振袖はサラリとした軽い生地の古典模様。
渋いピンク色が裾の方から徐々にもっと淡く肩まで上がり、金糸銀糸を混ぜ合わせながら美しい刺繍を浮かばせている。
着付けが終わって鏡を見ると
あ、可愛いって素直に思った。
いや
私じゃなくて
振袖が綺麗でヘアメイクも完璧だから
きっとそのせいだと思うんだけど
可愛い。
お母さんの着付けも上手。
「おねーたん。かわいい」
いつの間にかやって来た綾夜芽ちゃんが、見慣れぬ私の姿に驚きながらもそう言ってくれた。
「綺麗でしょう」
お母さんが綾夜芽ちゃんを抱き上げ
鏡越しに私を優しい目で見守る。