溺愛されてもわからない!

食事の後片付けを手伝ってから
田中さんからもらったバタフライナイフを月夜に見せる。

私も使った時は夢中だったから
よく見てないんだ。

組み立てると持ち手が少しカーブしていて
手になじみやすい。
田舎の家にあった枝切りハサミに通じるものがある。

使い方を和彦さんが丁寧に教えてくれて
月夜の目も真剣。

幼い月夜にとっては
ヒーローの武器みたいなもんだろう。

「ハチじゃなくて、いじわるな人につかえばよかったのに」

「うーん。それは奥の手だよ月夜」

「おくのて?」

「うん。切り札というのか、最後の最後の必殺技みたいなやつ」

「ジュウオウスラッシュみたいなの?」

なんだそれ?

「わかんないけどそう。それ。心と身体を鍛えるべきで、むやみに出さないんだよ」
なーんて
前の学校の先生の受け売りですが。

でも月夜は真剣に聞いていた。
その後ろで和彦さんがうなずいてる。

極道に通じるものがあったかな。

「でも気をつけて」
和彦さんが低い声で釘を刺す。
了解ですお義父様。

ナイフは危ないけど
ちょっとだけ
今日は月夜と仲良くなれた気がして嬉しかった。

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