溺愛されてもわからない!
結果
私は生まれてから16年間
ずっと育ってきた町を、離れる事になってしまった。
いまさら引っ越し。
友達と泣いてお別れをして
少ない荷物をまとめ
朝日を背にして
空家になった我が家を見つめ直す。
スキマ風が入る
おんぼろ町営住宅だったけど
住めば都で文句はなかった。
引っ越し先も住めば都になるかなぁ。
「ごめんね。すみれ」
ポソッとお母さんが私に言う。
ん?ダメだよね。
私が寂しい顔をすると
お母さんが悲しくなってしまう。
ほら
もう泣いてるし。
「泣かないででお母さん。お母さんは悪くないよ。これから新しい場所で和彦さんと幸せになろうよ」
わざと明るく言うと
お母さんは微笑む。
私がしっかりしなきゃ。
気合を入れ直してたら
和彦さんの高級車が私達を迎えに来てくれた。
和彦さん……じゃなくて
お父さんになるのかな。
まだ恥ずかしくて言えないな。
「椿さん。すみれさん」
黒塗りの車の助手席の窓を開け
大きな声を上げて手を振っている。
怖い顔してるけど
純粋な人だよね。