ダブルベッド・シンドローム
立会
株主会社DOSHIMAの主要取引先で、やたらとド派手なパーティーを好む会社があるらしいのだが、社長と専務は、毎年そのパーティーに出席している、とのことである。
ド派手なパーティーというのは、会社の何周年記念というものではなく、そこの社長の息子の生誕祭だというのだから驚きである。
息子はまだ、今年で六歳だそうだ。
その六歳の誕生日が、もうすぐ来るのだという。
社長と専務は、もちろん今年も出席しなければならないのだが、今年はなぜか、専務の婚約者を激しく見たがっているその社長のために、私も連れていかれるらしいのだ。
もちろん緊張はしていたが、専務の婚約者として正式に振る舞うということに、私はそれが自分の初舞台となると、ほんのわずかなワクワクもあった。
わざわざ半休をもらい、専務とパーティードレスを選びに行って、プリンセスラインの、ワインレッドのドレスを買ってもらっとときから、そのワクワクは最高潮となっていた。
「専務、変じゃないですか?」
「いいえ、よく似合っています。綺麗です。」
当日家を出る前にわざわざ専務にそう聞いたのは、褒めてもらえないと、一日中、ドレスをいつ褒めてもらえるのか気になってしまうからであった。
とても、そんな雑念が入った状態で、今日の初舞台を務めあげることはできないと思ったので、私は、そうならないよう、最初に褒められたという事実を作っておいたのだ。
「わっ、専務・・・ん、」
専務はあの夜から、やたらと私にキスをするようになった。
そのタイミングは的確であり、おそらく専務は、そういう雰囲気になれば、キスをするよう心掛けているのである。
それは、私を愛する努力に他ならなかった。
私たちの愛情は、夜の触れ合いや、適切なキスに頼ることで、比較的、無意識に高まりやすいということを、この数日でお互いに自覚するところであった。
それに頼ることに私も賛成であり、あれから、キスも、触れ合いも、愛情を高める一手として、回数を重ねてきた。