ダブルベッド・シンドローム
真相
奥様は、その後三日間入院したらしい。
その間、マイとメイは社長のマンションに預けられて、奥様の家の家政婦が社長のところへ出張していた。
その事情は全て、私は慶一さんから聞いただけであり、慶一さんもまた、全て社長から聞いたことであった。
奥様が倒れたことで、私と慶一さんの生活に変化はなかったが、慶一さんは、私に対して、さらに情熱的な行動をとるようになっていた。
情熱的な行動とは何かと言うと、普通の恋人の、付き合って半年くらいの、お互いを好きだという盛り上がりがピークの頃の、ごく平凡なスキンシップである。
具体的に言えば、会社のエレベーターで隠れて深いキスをされたり、二人で帰宅してからすぐに、スーツのままベッドに押し倒されるというようなことである。
私はそれを歓迎しているが、一体どうして彼がそうなったのか、分からないままであった。
「菜々子さん。どうして菜々子さんは、看護師を辞めてしまったんですか?」
彼がそう尋ねてきたのは、ちょうど、寝る前の情事が終わって、素肌で触れ合っていたときだった。
彼は上半身裸のままで、逆に私は、上半身のみ服を着ていた。
「あまり向いてなかったんですよ。」
「あの、それは前もお聞きしましたが、どうも僕には、そうは思えません。菜々子さんは、看護師に向いていると思います。母が倒れたときも、菜々子さんがいなければ、僕はどうなっていたか分かりません。」
「あれは、看護師なら、皆日常茶飯事で、きっと誰でもできたことです。」
「いえ、そのことだけではありません。僕にずっと大丈夫だと声をかけてくれて、僕はそれにかなり救われました。菜々子さんには、人を労る力があります。それは普通の人よりもです。それは、看護師を経験すれば誰でも持っている力とも思いません。でもその力がある菜々子さんは、看護師に向いていると思うのですが。」
「・・・ありがとうございます、慶一さん。」
私は慶一さんの胸に身を寄せた。