未来へのメロディー
「真梨ちゃん起きて!次移動だよぉ…。」

もう一時間経ったのか。よく寝れた。

「ありがとう。起こしてくれて。」

「もう、ずっと寝てるんだもん!先生かっこいいのに…」

「ごめん、あんまり良さが解らない。」

次の科学の準備を進めながら私はやんわりと言った。

「かわいそうだよぉ~、せっかく授業してくれてるんだよ。」

「でも、科学の時小波だって絵かいてるじゃん。」

「いいの!こなみは絵、上手だから!」

そのよくわからない理由は何なのか、
そしてその自信は何処から湧いてくるのか。
実際、芸術的な絵は描く。
一部のマニアックな人に興味を持たせそうな作品だ。
どちらかというと、フルート一本に絞った方が将来性があるかもしれない。

まさかそんなことは口に出せない私をよそに、小波は廊下に出て科学室へ向かった。

「あ。」

廊下を見てみると 、見知らぬ女学生と担任がいた。

「真梨ちゃんっ!すっごいかわいいこだね!転校生かなぁ?」

あまり周りを見ずに割りと声を押さえずに思ったことをそのまま言った小波を、女学生はちらっと見た後私と目があった。

「え。」

思わず声が出てしまった。
ずっと見られている。
目が、合っている。

「真梨ちゃん?」

「あっ」

思わず息を呑んだ。ぼうっとしていたみた
いだ。らしくない。

「どうしたの?見つめあってたよ?」

「いや。」

「可愛いというよりは、格好いいでしょ。」

キリッとした目に、ストレートヘアのポニーテールがよく似合っていた。
身長も私より高い。久しぶりに小波と共感できるかと思っていたのだが、やはり少し価値観が違うのだろう。

そうこうしているうちに、女学生は担任と一緒に廊下を歩いていった。
えぇ~、かわいいこだったよ~、という小波をよそに、科学室へと急いだ。

もう既に始業のベルが鳴った後の教室は静まり返り、授業が始まっていた。
そうっとドアを開けると、白衣を着たお祖父ちゃん先生がこちらをちらっと見て席を指差した。
遅刻してきた生徒にですら笑顔。
確かにこれは絵を描いていても怒られなさそうだ。
怒られたとしても怖くないだろう、席についた小波は早速作業に取りかかっていた。
遅刻したことを反省する気は微塵もないようで、スケッチブックと化したノートに新しい不気味な世界を生み出していた。












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