未来へのメロディー
案の定眠りについた3限目国語の授業では居眠りが見つかってしまい、黒板に居眠り生徒の欄を作られ名前を書かれてしまった。
欄といっても私の名前しか書かれていない。

「おはよう真梨ちゃんっ!」

うるさいのが来た。来たといっても隣だから避けられない。

「…朝から元気ね。」

「もう11時回ったよ~?」

「真梨ちゃーん?」

後ろの席から呼ばれた。

「転校生、お迎えお願いしてもいい?」

橘だ。
急に心臓が高鳴る。

「わかった、行こうか。小波は講習頑張って。」

「ありがとう♪行ってらっしゃ~い!」

帰りの支度をしながら、ニコニコ笑顔でお見送りの小波をよそに私は何処と無く緊張していた。

馬鹿みたいだ。相手は只の女学生だというのに。

「じゃあ少しの間だけ一緒だからね、一緒に行こう?」

「あ、そうだったの?てっきり一人かと思った。」

「まぁ私は生徒会担当の先生と少し話してから行くから、生徒会室までだけどね。」

ここの学校は第1号館と第2号館で別れていて、第1号館が普通科生徒の1学年につき6クラスが収容されている。
私たちが足を運ぶことは滅多にないのであまり解らないが1階が3年生、2階が2年生、3階が1年生となっているらしい。
基本30人ほどのクラスで、女学園さながらやはり頭もいいようだ。
2号館は私たち芸術専攻クラスと、科学室や職員室等の特別教室の館で3階が1年生と特別教室、2階が2年生と特別教室、1階が3年生と職員室や事務室だ。
因みに、それぞれの学年が交流をすることは滅多にない。階段を歩くときにすれ違うくらいで、芸術専攻クラスは階段から一番離れた位置にあるので芸術専攻ならまだしも、普通科の生徒が目にするなんて卒業するまで1回も無い、なんて事もあり得るそうだ。
これから向かう職員室は1階。生徒会室は2階なので、本当に短い間だ。

「でもなんで橘が生徒会室に?」

「だって私、学級委員じゃん。」

知らなかった。

「そうだったっけ。」

「えぇ…嘘ぉ…真梨ちゃんって、周りに関心無さすぎじゃない?」

そうでも無い気がする…いや、そんな気もする。

「私、あんたのこと全然知らないわ。」

「じゃあ私の楽器何かわかる?」

全くもって解らない。

「クラリネットだよ!一応楽団だとコンサートマスターもやってるの。」

確かにクラっぽい顔をしている。

「でもそれって一般の楽団でしょ?」

自慢げに話すが、この学校に入学するほどの実力があれば素人なんて相手にならないだろうしましてやトップの座なんて簡単に奪い取れるだろう。

「ふふん、全国大会常連でプロもいる楽団の中のコンマスだよ?」

それは確かにすごいかもしれない。

「あ、じゃあ私はここでばいばいだね!」

「じゃあね。ありがとう。」

「うん、転校生となかよくね♪」

できるといいのだが。

そんな一抹の不安を抱えながら先を歩き始めた。
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