Turquoise Blue 〜空色のベース〜



マキちゃんは床に座って
黒いギターケースのポケットを開いて
『Azurite』のCDを開ける


歌詞カードは黒の光沢で
裏には、青い宝石の写真が
小さくプリントしてある

私も慌てて同じ様に
鞄から、CDを取り出した



表紙は黒地に
ペン先で書いたみたいな青
『Azurite』って字だけ




パラパラ見ていると
1stシングルだった『空の表紙』を
マキちゃんが小さく歌い始めた


低くて、良い声だと思う。

思わず言ってしまった



「…なんでマキちゃんが
ボーカルやらないの?」



え?と言う表情で、こっちを向いた



「そりゃ ギターが一番好きだから
それに…アズの曲は無理
この人軽々歌うけど」



「それは!マキちゃんは
声低いから、当たり前じゃない?」




「でもアズ、15位の頃
『ボウズ』ってバンドで
ライヴハウス出てた時
『dhiran Car』の曲
普通にキー変えないで
歌ってたみたいだから」


「dhiran Carって…
外国の男の人の?!」


「そ。
低い方も相当出るって事だよ

…参っちゃうよね

この人、今、18か19でしょ」





「………」


『Azurite』はプロモとCDのみで
正体不明でデビューして

でも、当時ライヴハウスでやった事や
聞いた事がある人は
すぐに『あのボウズ』だって
わかったらしい



マキちゃんのお兄さんは
一回一緒にやった事あるから

私が知ってる
この人が年が18か19だって情報は
全部マキちゃんのお兄さん→
マキちゃん→私 なのだ



だけど
当時からあまり自分の事を話さない
細くて、背が高くて
頭は丸刈りで
謎めいた人だって聞いた





「ごめんね!遅くなった〜!」

「ごめんごめん〜!」



ユリちゃんとシノが
キーボードを二人で持ってやって来た






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