Turquoise Blue 〜空色のベース〜
羽化と高層ビル
−ずっと地面を見てた
通話の切れた携帯を
『彼』が私に渡す
そのまま、スカートのポケットに入れた
『…戻って来いって?』
「うん」
『…You は』
「 うん 」
『…あの曲は
俺の中で、
すごく大事な歌なんだ』
「……うん 」
『俺が作った曲を彼女が歌った
…今はもう
他に考えられないんだ』
「…………うん」
−『彼』は
街灯の光に照らされて
雑居ビルの、灰色の隙間から
すぅっと 息を吸った
まっすぐ
顔をあげて夜空をみつめる
そして 両手を揚げて
肘を曲げて
両の手の平で
顔を覆った
…その口元は微笑んでて
まるでこれから
どこかへ飛んで行く高揚に
震えてる
生まれたばかりの蝶みたいだ…