Turquoise Blue 〜空色のベース〜
全員
制服に着替えた
「うちら。って感じだね」
そう、シノが言う
マキちゃんも、ユリちゃんも
私も、『うん』と答えた
「落ち着いたし
私、ステージの方見てくるね」
マキちゃんが目を輝かせてそう言う
ユリちゃんは
「私は少し、外の空気吸って来る〜」
「あ、
じゃあ私もステージ見たい」
シノが挙手しながら言った
「荷物見てるから、行って来て」
「じゃあ、よろしくね」
「うん」
−もう一度、ベースを取り出す
膝の上に抱えた
肩のベルト、ストラップも
ちょうどいい長さだ
ケース横のポケットから
クリーナーを出して
綺麗に拭く
…無くした筈なのに戻って来た
お母さんの
『人任せ、いい加減にしなさいよ』
って言葉が
いきなり浮かんで来る
…お母さん達
もう来てるのかな
でも今はなんか
会いたくない
何か解んないけど
気持ちが家に
戻っちゃう気がするんだ…
気がついたら
控室には私ひとり
…無用心だなあ
照明は
三つある鏡の上に
ひとつづつ
蛍光灯
穴の空いた、音楽室みたいな
黒い壁
そこにいっぱいサインとか
落書きがしてある
…どれくらいのバンドが
ここでやったんだろう
ゴツっと、音がした
− 外じゃないし
他にもブーツの人は、
たくさんいるのに
なんで『彼』のは
解るんだろう………