Turquoise Blue 〜空色のベース〜
『彼』は
大股開きで椅子に座って
ドライヤーのオンを入れた
低い風の音
骨ばった指を、髪に入れる
…なんだかぎこちない
もう少し、
髪乾いてからの方がいいのに
『…乾かねー』
私は急いでバックから
家から持って来たタオルを出して
立ち上がる
『彼』の後ろに立って
タオルを差し出した
鏡越しに
『彼』が私を、見てる
『……やって』
「え!!…あ
………うん」
薄いピンクのタオルを
『彼』の頭にのせて
ワシワシと、拭く
弟の頭 よくこうやってた
…座ってる『彼』と私
たいして高さ違わない
足、やっぱり長いんだなあと
思う
だいぶ乾いたから
鏡台からドライヤーを持つ
『弱』にして
後ろ髪から、風をあてて行った
− 香水のにおいとかしなくって
優しい石鹸の香り
「植物館物語のシャンプー
使ってるの?」
『…頭?』
「うん」
『何か知らない
家にある奴、石鹸』
「……石鹸て。髪痛むよ?!」
『洗えればいい』
「………」
− 無頓着っていうか
なんていうか……
「乾いたら、ワックスとか付ける?」
『いらない』
「…そか
…………服 洗ったの?
乾くかな
本番までに」
『わからない』
「乾かなかったらどうするの?」
『このままやる』
「…は 裸?!」
『そう』
「……そ そうって…」
男の人だから
いいのかも知れないけど…
…ああ、蘭さんも際どいか…
裸とか、ああいう衣装とかには
一生縁が無いな
私は………
そこに
早足で、誰か走って来た