【SS集】1分で読める超短編
ホタル……
風を切りながら僕は考えた。
“私”とは誰なのかを。
不思議と、手紙に書かれた“あなた”というのは僕のことだと確信していた。
行かないといけない。
早くしないと。
自然にそんな感情が溢れてきて、ペダルをこぐ力が強くなった。
僕の中のもう一人の僕に導かれるように、切符を買って電車に乗った。
一時間近く電車に揺られ、辺りはもう薄暗くなっていた。
降りた駅は、田んぼと森に囲まれた町に小さく佇む駅だった。
畦道を進むうちに、草を踏み倒したような小道を見つけ、森の奥に踏み行った。
「あ……」
僕の目に、開けた空間が飛び込んできた。