僕らの初恋青春譜
[海斗side]
今日は和恋と夏祭り!やばい。楽しみすぎていつもと違う声とかになったりしたらどうしようか。とくだらないことを考えていたら電話が鳴った。
「もしもし。ああ、中村か。何だよ」
電話相手は、中村こと遥。
幼なじみだから下の名前で呼ばないのかとか思う人もいるが、幼なじみと言っても和恋がいなくなった中1以来話していないし、中村とは中学の時、クラスが違ったので「中村さんいる?」と皆の前では呼んでいたため慣れてしまったのだ。
きっと中村も俺と同じ考えがあるはず。
「今日さ一応、夏祭りだけど黒澤は誰かと行ったりするの?」
不意にそんなことを聞かれて少し謎に思った。
だって中村はそうゆう行事、興味無さそうに感じていると思っていたから。
「ああ。和恋と行くよ。だから、すげー楽しみなんだ!」
「ふーん。そう。でも、まあ丁度良かった。私達さ、3年前の夏休みの途中から和恋と連絡つかなくなったじゃんか。で、その日以来、夏休み明けても和恋とは会えなかった。後で私達は和恋が今住んでいるあの家から引っ越したって知る訳よね?」
「ああ。確かに言われてみれば……。それが今日と何か関係あるのかよ?」
「よく考えて。記憶を失った人はいつか思い出す時も来るかもしれないということを。和恋は今になってまたこの街のあの家に戻ってきた。つまりは、この街の生活は和恋にとっては1からスタートするみたいなもので、黒澤の話から考えて、記憶を失う原因を作った日は3年前の今日だったかもしれないということなのよ。」
その言葉に俺は戸惑った。もしかしたら今日、和恋は俺と中村のことを思い出してくれるかもしれないということへの期待とやっぱり今日になっても思い出せずこれから先も記憶と戦い続けて苦しむのかなという不安。
「つまり、今日もしかしたらもしかする?ってことか?」