僕らの初恋青春譜
「よしっ、一旦さ俺の家に行って和恋の傷を手当てしてからもう1回祭りに行くっていうのはどう?」
「いいの?家でちょっとお姉ちゃんと喧嘩しちゃったもんだから……帰りにくくて」
「いいって!……でも、この傷隠せそうじゃないし表通りじゃ目立ちそうだから裏通り行こうか」
そう言うと黒澤君は私の手を握ってベンチから引き上げてくれた。
「う、うん」
不意に黒澤君が私のクラスに来た時のことを思い出した。あの時はまだ知らなかった。こんなに優しくて私のことを心配してくれること。
黒澤君と手を握っている時にそんなことを思っていると、私を引っ張りながら前を歩く黒澤君が止まってこちらを見てきた。
「手を繋ぐのは今日特別だからな」
「え?何で……?」
とっさに私はそんな言葉が出てしまった。今やっと好きと気づけた私にとって黒澤君との手を繋ぐことはとても特別なことなのに……。