僕らの初恋青春譜







「あのさっ!まだ聞いてなかったんだけど…名前を教えて下さい。フルネームで」

















そうとっさに私の口から言葉が出たものだから相手側の黒髪銀ピアスさんは驚いていた。


















「フルネーム…フッ、普通に名前だけ聞けばいいのに面白い言い方するね。えっと、前にも名乗ったけど、佐々木日向です。」


















やっと、聞けた。そんな嬉しさに浸ってしまった。けど、もう一つ聞きたいことがあった。正直、聞くことをちょっと迷っていたこと。














「あとさ、もう一つ聞きたいんだけども…何で遥に遊園地に行った時に最初は敬語だったのに途中からタメ口になったのかな…って。何か嫌なことでもあったの?」

















あぁ。ドキドキする。それも嫌なドキドキ。やっぱり聞いてよかったの?たまに一回、口に出したことを後悔することがある。そんな時は後でどうしようもない罪悪感に包まれるけどやっと言えたという爽快感にもなるのだ。
















「あぁ、そのこと。別にもの凄く嫌いとかそうゆうのじゃなくて。俺の姉に性格とか口調とか似ていて。たまにない?ある友達の言ったこのセリフ、そう言えばあの人も言っていた的なこと。」

















「あっ、ある、ある!実はその子は私の友達と話したことあって、その時にその子は私の友達が言ったある言葉をたまたま使っちゃったんじゃないかーって。」















「だから、素が出たんじゃないかなって…」


















その時の彼の下を向きながら喋った表情は少し悲しそうに見えた。多分、遥に申し訳ないとか思っているのだろうか。強く当たってしまったことを…。


















「そっか。色々話してくれてありがとう。あと、私のことは森山さんじゃなくて和恋でいいです。よろしく、¨日向くん!¨」そう言い残して私は美術室を後にした。時刻は4時45分。

















美術室に残された佐々木日向はポカーンとしていた。




















「変なやつ…変わってるな。警戒すべきなのか分からねぇ。」そう言いながら未読メールを返そうとしている相手は遥。



















打ちかけている文には「森山和恋ってどんなやつ?」と画面に出されている。



















別に興味があるとかじゃない。普段、女子には興味すらないのにこんなこと聞くのはどうかと思うけど、あの人の考えていることが分からないから警戒すべきか脳裏をよぎった。






















こんなことやるなんて、俺らしくない。








< 239 / 242 >

この作品をシェア

pagetop