月華の銀色の乙女。

慌ててフードを抑えようとするも、突然の強風の為素早い反応ができなかった少女。



その為パサリ、と黒いフードがとれ少女の素顔が露わになった。




｢ っ……！｣




少年は目を奪われた。




ふわふわと揺れる長い銀髪に、海底の如く青い、マリングラス色のやや伏し目がちだが大きな瞳。



白く滑らかな肌には、ニキビ一つ見当たらない。



顔の左半分は長い前髪で覆われているが、それでもその整いすぎた顔立ちは隠しきれない。



華奢な体つきで、よくあの高さから飛べたものだ、ともし他に誰かいたらそう思うだろう。




驚くことに、睫毛や眉毛まで銀色だった。




その美しい姿はまるで────




｢ 天女………っあ！｣




ウィルはしまった！と顔を赤くして口を抑えた。




しかし、幸い小さな声だったので少女には届かなかったようだ。





『 ……？』




その様子に少し疑問を抱いた少女に、少年はほっと胸をなでおろす。





｢ ……えーと、お姉さんの名前は？｣





ウィルがおずおずと聞いてきたのをみて、そう言えば自分は名乗ってないことに気づいた。




( ……そうだ、ウィルは教えてくれたというのに私は名乗りもせずに…… )





なんて失礼なことをしたのだろうか。




見た感じ自分より年下の少年の方がしっかりしている気がして、少女は少しだけ落ち込んだ。




『 ……ルシア』




あまり話すのが得意じゃない少女もといルシアは、そう小さく言った。




「 ルシア……っていうんだね！ 」




ルシア……その名は、この世界の愛と慈悲、そして優しさを司る女神と同じ名であった。



( ……すごく、綺麗な人……。もっと話したいな… )



ウィルはもうこの時点で彼女の虜になったといえよう。



何故ならルシアを一目見たときから吸い込まれるかのごとくハマってしまったからだ。