月華の銀色の乙女。
「 …さっきは本当にありがとう!もっと話してたかったんだけど、僕もう帰らなくちゃいけないんだ…。兄さん達に怒られちゃう笑)ルシア姉さんは?」



残念そうにため息をついたウィルは、ルシアにそう尋ねた。



『 え……?』



「 家に、帰らないの?」



『 ……っ 』



ウィルに見つめられ、ルシアは俯いた。



彼女に家なんて場所はとっくのとうに失っていた。



ただ、ここにいるだけ。



「 ………帰る場所、ないの 」



「 っ……!」



驚いて目を見開く彼をよそに、ルシアは瞼を伏せた。



『 …ここしか、居場所はないの 』



弱々しく言ったルシアは、少し寂しそうで ———



ウィルは、



( なんて軽率なことを聞いちゃったんだろう……!僕はバカだ、ルシア姉さんに悲しい思いさせて…… )



と顔を歪ませながら反省した後、



( ルシアお姉さんを、守りたい ——!)



と、決心とともにある提案が閃いた。



「 っルシア姉さん!なら、僕の家に来て? 」



『 ……っえ?』



ルシアは一瞬何を言われたのかわからなかった。



「 ルシア姉さんは、ここに一人でいたんでしょ?寂しかったんでしょ?僕考えたんだ、どうしたらルシア姉さんが悲しくならないか。そしたら思いついたんだ、僕たちと一緒に住めばいいんだよ!さっきのお礼もしたいし!」



と、ウィルは必死に彼女に説得した。



これを聞いたルシアは、ウィルの話の内容とその必死さにただただ驚くしかなかった。



その気持ちは嬉しかったが、そもそもこんな見ず知らずの全身真っ黒な格好をした人がいきなり訪問したら100%怪しまれるし、迷惑だし、拒否されるのは目に見えている。



それに———



( 私は、あまり人と関わってはいけない…… )








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