パーフェクト彼女の恋煩い
昔のことを思い出して身震いする。
車に連れ込まれそうになったり、人影のない道に引っ張られたことも何度かあり、防犯にはいつも細心の注意を払っている。
「いくら私が可愛いからって犯罪に巻き込まれるいわれはないってーの…」
学校に着くと、ガラッと教室の扉を開く、運動部の朝練がちょうど始まるような時間なので、教室には私と、もう1人の人間しかいない。
どうして、こんなに早く登校するのかというと、この大きな背中の男が原因なのだ。
「おはよう」
微動だにしない背中に声をかける。すると、チラッと視線をよこした男は、頭でペコッとお辞儀をしてまた前を向いた。
この不愛想極まりない挨拶を、私はこのクラスになってから3ヶ月も続けている。いや、ここまでたどり着くのに3ヶ月というのか。
この男は水名剛、 今年から同じクラスになった。
顔はいたって普通の顔だ、むしろなんの特徴もない顔かもしれない。短い黒髪に、一重の瞳、少し厚めの大きな唇。いつも眠そうな顔をして、なにを考えているのか分からない。
唯一平凡じゃないところはその身長で、187.8センチぐらいある。そんなバカ高い身長の上に無表情で無口なので、女子とはあまり絡まないが、男子には結構慕われていたりする。
部活には所属していないが、たまに助っ人として駆り出されているのを知っている。
朝は誰よりも早く来て、なにをするでもなくいつもぼーっと机に座っている。
スラスラと、よくもこんなに情報が出てくるのか自分でも不思議だ、これでも謎が多すぎるので、この私がチラチラと観察して得た情報だ。