パーフェクト彼女の恋煩い


その夜、ベッドで横になりながらも、頭の中ではあの水名という男の顔がクルクルしている。


あの向けられた眠そうな瞳が忘れられない、ちょっとも興味がなさそうな態度がどうしても胸をザワザワさせる。


なんなのこの気持ち、どうしてあいつばっかり浮かぶの、私どうしちゃったの…。



こんな気持ちになるのは初めてで、どうしたらいいのか分からない、いよいよどうしようもなくなり、私は唯一の友人に相談することにした。


「もしもし?どうしたの珍しいね電話」

「うん…夜中にごめんね」


電話に出たのは田代亜美、小中と一緒だった幼馴染だ、両親同士が仲が良く、親戚のように一緒に遊んできた。高校では離れてしまったが、今でもよく連絡を取り合う唯一の友達なのだ。




「いいよいいよ、どうせ暇だし、で?なんかあったの?」


亜美が、私の様子を察して聞いてくれる。


「う、うん…あのね…」



私は今日の放課後あったことを正直に伝えた、そして今の自分の状態も。


「これってなんなんだと思う?どうすればいいのかな…」



「…」

「…亜美?」


「やだー〜!!!ちょっと巴、それ恋してるのよっ」


亜美のいきなりの盛り上がりに戸惑いながらも、聞きなれない単語にぎょっとする。


「こ、恋っ!?わ、私が!?ない!ないないない!」


「別に否定しなくてもいいじゃなーい、あー見てみたーい巴の初恋相手」


「ちょっと勝手にきめつけないでよ、私があんな平凡野郎に来いなんてするわけないじゃない!?」


「えっ平凡なんだ、ますます会ってみたーいっ超絶美少女の巴がまさか平凡君に片思いなんてね〜っ」


片思い!?少女漫画に出てくるような単語にビビる。


「別に頑張って否定しなくてもいいんじゃない?一度会っただけなのに、その時のことが忘れられなくて、胸がドキドキするんでしょ?それって、私から見たら恋よ」


「うっ…」


確かに…そうやって聞くとまるで私が恋してるみたい。でもでもでも、本当に私恋しちゃったの?今までそんなこと全くなかったっていうのに…



昼間のあいつの顔を思い出すと、ますますキュンとしてきた…。


恋という自覚をした途端、気持ちが膨れ上がるのを感じる。


「こ、恋…かも」



「だから言ってるじゃない、で、どうやってアプローチするの、」


「あっ、アプローチ!?しないしない!」


「えー?!なんでよー、高校生活は短いのよ?頑張ってアタックしないと終わっちゃうよー」



「べ、別にどうこうなりたいわけじゃないし」


「ばかねー、その人の学年がなんなのか知らないけど、いくら顔が平凡だからってそんだけ背が高くて、キュンとさせるような行動とれるんだったら、いつ彼女ができてもおかしくないのよ」



そう言われて、放課後の出来事が頭をよぎる。確かにスマートに手を引いて私を隠すなんて自然にやってのけるあたり、只者じゃない感じはする…。



「ど、どうしよ〜やだ〜〜」


ふえーと泣きつくと、呆れたように亜美に怒られる。


「本当に顔だけはいいのに中身は小学生なんだから、まずはその人がどの学年なのかとか、何部なのかとか、基本的なことを知る必要があるわ、頑張って調べなさい」



的確な亜美の指示にこくこくとうなずく。


「わ、わかった!頑張る!」





そう言って決意してからもう一年と3ヶ月がったって…。




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