パーフェクト彼女の恋煩い
綺麗な簡素に書かれた答えと解説に、グフフと変態的な笑みが漏れる。
問題用紙には簡単にだが、手順が丁寧に説かれた答えと解説があって、その分かりやすい書き方に、水名の人となりが見て取れるようで、とても嬉しかった。
こうやってわたしがしつこく構っても、態度を悪くするでもなく、よくもならないが…、たまに相手にしてくれる。
それが嬉しすぎて、朝の時間にわざわざ早く来て水名に話しかけてしまう。
でも今回は隣に座らせてくれたし、水名との距離が近くなって来たんじゃない?!
実際よく考えると強引に隣に座っただけのことであるが、巴は生まれつきのポジティブ思考なのでまったくこたえない。
この紙は永久保存版ね…家に帰ったらファイルに閉じなきゃ…。
ここにあのはきはきとした親友がいれば、せっかくの美少女も勘違い変態野郎と大差ないわねと嘆いていただろう。
片思いも長くなるとだんだん拗らせてくるようで、巴も、全くつれない水名に一年ほど思いをつのらせすぎて変な方向に行きかけている。
いつも、朝の恒例のかまちょタイムを終えると、その広い背中をただただ眺めるだけの時間だ。
水名は喋ることをなければ振り向くことすらしない。
同じ空間にいる私のことなどまるで気にしていないようで、この朝の時間は唯一の楽しみであり、虚しい時間でもある。
その時、廊下からざわざわとした雰囲気が伝わって来て、巴はハッとする。
いけない!そろそろ朝練を終えた生徒たちが戻ってくる時間だわっ。
巴がこの時間にこの教室にいるということが知れ渡れば、この私だけの幸せな時間は一瞬で崩れ、見物人で溢れかえるだろう。
そんなの絶対にいやだっ
巴はいつも通り、教室を出ると、喧騒から流れるように静かな方へそそくさとかけていく。
これも毎朝の恒例だ。適当に人気のない廊下あたりをふらふらしてから、通常の時間になってから教室に戻る。
ああ…水名は毎朝早く来てはしつこく話しかけて来て、逃げるように教室を出ていく女をどんな風におもっているのだろう。
きっと変な女だと思ってるんだろうな…うう…。
想像するとあまりにもつらいので、巴は深く考えることをやめた。どうせ一年以上もなんの発展もないのだ、いまさら気にしたってどうこうなるわけでもない。