クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「そういえば、高校同じだって話でしたよね」
手元の端末で注文をしながら言われる。
「学年はひとつ違うんでしょう? それなのに随分、仲が良さそうですよね」
端末の液晶画面からこちらにチラリと視線を向けた北岡さんが、にこりと微笑む。
探りを入れられているわけではない……と思う。
でも、ここで〝実は昔の恋人なんです〟なんて答えてこの後の仕事をやりづらくするわけにはいかない。
なにか上手い嘘を……と思い考えていると。
「うちの高校、運動部は基本的に仲よかったんですよ。中でもバスケ部と野球部は仲良かったから、それで」
八坂さんがぶっきらぼうにそう答えた。
敬語を使っているところを見ると、北岡さんは八坂さんよりも年上みたいだ。
「へぇ。瀬名さん、野球部だったんですか? マネージャー? 大人しそうに見えるし、活発に部活に励んでたなんて意外ですね」
驚いたように言われ、うなづく。
「中学のころから高校野球が大好きだったので、高校では絶対にマネージャーしようって決めてたんです。マネージャーの仕事は結構ハードでしたけど、楽しかったし充実してましたよ。たまに、部員とキャッチボールしたりして」
グローブの皮や、グラウンドの土の匂いが懐かしくて思わず笑みがこぼれる。
毎日毎日埃まみれ汗だくで過ごした日々は、なににも変えられないと今でも思う。
「へぇ。私なんて部活は入らないで合コン三昧でしたよ。男漁る日々でしたね」
「漁る……でも、クラスのなかにはそういう子も結構いたかも。私は、すぐに部活に走り出してたから、放課後の事情はよくわからないんですが」
昔話をしてから「ところで」と話題を変え、北岡さんを見た。