クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「関係ないってわかってんなら、なに口出してんだよ」
「ほんと、ちょっと引っ込んでてくれない? あんた邪魔だし」
「……いえ。引っ込んでいたいのは山々なんですけど。男ふたりを相手にしてる井村さんを黙って見ているわけにもいかないので」
関係ないけれど、放ってもおけない。
傍から見ても、平和な話し合いには見えなかったし、井村さんが嫌がっているのは一目瞭然だ。
ここはコンビニの駐輪場だ。
今は、人通りがないけど、そのうち誰かしらが来店するなりする。
最悪、無理やり引きずり込まれるような事があったとしても、大声を出せば誰かしらに届く。
それを頭のなかで確認してから、覚悟を決め、井村さんの元彼たちをじっと見た。
「なんだよ、おまえ……邪魔だって言ってんのが聞こえなかったか? それともまさか、俺たち相手にやる気か?」
私がひるまないからか、元彼が少し苛立った様子で聞く。
「いえ。お引き取りいただきたいってお話してるだけです」
「だから、おまえに話はないって言ってんだろ。俺が話したいのは亜美で……」
「私、卓ちゃんと話すことなんてないって言ってるでしょ。もー本当にやだー……いい加減、帰ってよっ」
堂々巡りの会話。
一向に意見を曲げない井村さんに頭にきたのか、元彼が眉を寄せ、すごむような表情になる。
人殺したことあるんじゃないかなってくらいの形相に、ビクッと身体がすくんだ。
「とりあえずおまえ、いい加減引っ込んでろよ」
ドン、と肩を軽く押されただけなのに、後ろに倒れ込みそうになるほどの体格差を実感する。
足で踏ん張って支えながら、無意識に井村さんの手を握っていた。
たぶん、心細くて不安なあまり。
一方の井村さんも、言葉こそ強気だけど、実際は違うようだった。
握った手が、震えてる。