クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


大きな目だって不安そうな色を浮かべていて、間近で見ると本当に可愛いなと場違いながら思う。

「どうしよう、瀬名さん……」と震える声で言う井村さんに、私が守ってあげなきゃという謎の使命感を感じ、元彼に視線を移す。

途端「あ?」と威嚇され、肩が跳ねた。
もう、今にも襲い掛かってきそうなクマにしか見えない。声がいちいち大きいし、怒鳴るように話してくるから余計に恐怖が増す。

「や、やる気ですか……。こう見えて私、強いですけど」

井村さんの手をギュウっと握りながらハッタリをかますと、元彼たちが馬鹿にしたように笑う。

「いやー、女殴るのはさすがになぁ」
「な。別の意味でヤルって言っても、そんな棒みたいな身体じゃさすがに……だし」
「なぁ?」

ニヤニヤニヤニヤ。
完全に見下してくる笑みにムッとする。

……棒って。
『さすがに……』なんだ。言葉を濁されるほどひどくはない。……たぶん。

怖さはまだあるのに、そこにカチンと怒りのスイッチが入ったのがわかった。

だいたいにして、ヨリを戻したいのにふたりがかりっていうのがおかしい。
恐怖で頷かせてしまえば、あとでどうにでもなるって考えなんだろうか。

こんなガタイのいい男ふたりでって、卑怯にもほどがある。

「まぁ、とりあえずアンタに用はないから。あっち行ってろ。邪魔」

ドン、と再び肩を突き飛ばされて後ろによろけながらも、元彼たちを睨みつけた。

「井村さんがこんなに嫌がってるんだから、いい加減、男らしく諦めたらどうですか? そんな見た目しておいてやってることが女々しすぎです。だいたい、邪魔だの棒だの、さっきから人のことなんだと思って――」

頭にきて、感じていたこと全部を口にしていたとき。

「あれー。瀬名ちゃん? どうしたの? まだ帰ってなかったんなら一緒に帰ろうよ」

場に相応しくない、明るい声が響いた。



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