クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


じっと見つめる先で、倉沢さんは諦めたような笑みを浮かべ頷く。

よかった。伝わったみたいだ。
そう思い安心していると、倉沢さんが笑顔を浮かべる。

「あ。瀬名ちゃん。俺は、例え棒だろうがなんだろうがまな板だろうが全然イケるから、それだけ覚えておいてね」

腕にぐいぐい巨乳を押し付けられながら、そんなことを言う倉沢さんから目を逸らす。

そして「女のプライドがボロボロです」とポツリと漏らすと、八坂さんが「明日、支店長に報告してやれ」と少し笑った。


八坂さんの怒りは、もうだいぶ収まっているようだった。
それを雰囲気から知り、少しホッとすると同時に、でも関係ないのに……と、もやもやする。

付き合っているときならまだしも、もう、彼女がいるくせに、私の行動を制限するのはおかしい。

心配してくれるのは嬉しいけれど、彼女が可哀想だ。
あんな風に、身を案じて怒るのだって、同僚としては行き過ぎてる。

恋をカードに例えた場合。
女の人は、ひとつの恋が終わったら、そのカードの上に新しい恋を乗せるらしい。

そして、男の人は、横に並べるらしい。

女の人が上書きして忘れてしまう昔の恋を、男の人はいつまでも覚えていて……昔の彼女は、いつまでも自分の所有物だという感覚がある、というのはよく聞く話だ。

カードの置き方については、本当にそうだろうかと疑問は残るけれど、所有物の感覚はそのとおりなのかもしれない。

だから、八坂さんもあんな風に怒ったんだろう。

そう決めつけ、胸に生まれかけた期待を押しつぶした。



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