クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
声にしていない私の疑問に答えた八坂さんが、私をじっと見つめ……そして、手を伸ばす。
ぐっと強い力で頭を抱き寄せられ、おでこが八坂さんの胸にぶつかった。
私の身体をすっぽり包んでしまう、大きな身体。
七年前と変わらない感覚に……息がつまったように胸が苦しく締め付けられた。
「おまえが無事でよかった」
胸から直接響いた声が、じわじわと頭のなかに吸い込まれる。
タオルの上に落ちた水滴みたいに、ゆっくりと染み込んできて、私のなかに広がった。
今日のことを言ってるんだろう。
さっきのコンビニでのことを……と、やっとの思いで理解してから、震える声を出した。
「心配してくれて、ありがとうございます」
くしゃっと、髪が乱れることなんて気にもしないほど、強く抱き締めた八坂さんが、小さな声で「ん」とうなづく。
この距離じゃなきゃ、聞き取れないような声にどうしょうもないほど苦しくなった。
想いが溢れて、息ができない――。
過去の恋に溺れているのは私だけなのに。
抜け出さなきゃいけない腕のなか。
突き飛ばすことも、抱き締め返すこともできずに、ただ下ろした手をぎゅっと握ることしかできなかった。