クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「今日と、あと月曜だけだよな。それまでに覚えなかったらどうすんの?」
十二時すぎの店内には、来店客も少なく、ゆったりとした時間が流れていた。
お昼休みをとっている職員が多いから、職員の人数も少なく、端末や出納の音が大きく聞こえるほど静かだ。
わずかに眉を寄せ聞いてくる八坂さんに、目を伏せる。
月曜までに覚えられなかったら……。
それは、私も考えたことだ。
「……私は、次の派遣先に行くのは再来週からなので、上司に無理を言えば、数日くらいなら伸ばせます。
やっぱり、機械が苦手な人はいますし、来店客が多すぎてとてもじゃないけどコーチ時間がとれなかったり、色々なケースはありますから。
予定していた期間内でコーチが終わらないってこともたまにはあります」
四年目で、そういうことは過去に三度ほどあった。
私的には大きな問題ではないけれど、上は大変だと思う。
コーチ日数が延びれば、お金だって動くんだろうし。
だからこそ、個人の事情でコーチ期間を延長せざるをえないようなことは、よくない。
「まれにですけどね。それに、他の職員さんへは、広田さんと北岡さんが教えられるでしょうし、たぶん問題ありません。……あ、八坂さん。オペレーションカード、解除してません」
「ああ、悪い」
自分が使ったあとは、オペレーションカードを解除する必要がある。
解除しないまま、次の人がそのまま使ったとき、それ以降の操作も八坂さんがしたことになってしまうから。
出納機からカードを抜き取ろうとした私の手と、八坂さんの手が触れる。
「すみません」と言い手をひっこめると、八坂さんが妙な顔をして私を見た。