クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「ツラくないか?」

心配そうな目で見つめてくる八坂さんを、じっと見つめる。

ぼんやりとした視界に映る八坂さんは、私を見て「ん?」と優しい声色で言いながら、髪を撫でる。

身体全部がダルくて鈍いのに。
キュッと胸を締め付ける感覚だけが、いつも以上に痛い。

柔らかいところを握られ、その痛みに、じわっと涙が浮かんでいた。
熱のせいで無防備になった心が、苦しくて仕方ない。

「八坂さん……」
「どうした?」

不安を瞳に浮かべる八坂さんをじっと見つめた。
頭のなかが、ぼーっとする。

「すみません……」
「だから、気にすんなって。こんなん、なんでも……」
「付き合っていたとき……八坂さんにあんな顔させちゃって、すみません……」

続けた言葉に、八坂さんが黙る。

薄暗い部屋。テレビのなかではバスケの試合が行われていた。
八坂さんの大好きな、バスケの試合だ。

「八坂さんは、誰よりも、明るく笑ってる顔が似合うのに……私が、あんな顔させちゃったから」

いつもなら言わないようなことが口をついていた。

緩んでしまったストッパーは、熱でおかしくなってしまったのか、いうことをきかない。
そのせいで、奥底にしまっている記憶が、パラパラと水面に浮き上がってくる。

『俺らって、付き合ってる意味あるのか?』

あのときの八坂さんの、ツラそうな顔が、ずっと頭のなかから離れなかった。
七年間、ずっとだ。



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