クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
土曜日の夜には下がった熱。日曜日には、きちんと三食食べられたし、全快していた。
あまりに熱が下がらなかったら、さすがに病院だろうか。
熱に浮かされていたときには、そんなことも考えていたのに、あっという間の完治。
私はよほど病院が嫌いらしい。
そんなことがあって、万全の体調で臨んだ月曜日。派遣最終日。
その日は、日中の来店客が少なく、念願ともいっていい、何度目かの現金精査の作業を無事行うことができた。
最後となる今回は、私はただ見ているだけにして、すべての作業を広田さんが行った。
手際もよく、見落としもない。
二週間見てきて、エラーコードの対処もきちんとできるし、私がいなくてもなんの問題もない。
現金精査を終えた広田さんに「完璧です」と告げると、彼女は当たり前だとでも言いたそうに眉を寄せたけれど……そのあと、少し笑った。
「大変ですね。背負ってるモノがたくさんで」
空っぽになった出納機に現金を補填する広田さんに言う。
入金口に紙幣が一枚一枚吸い込まれていくのを眺めながら続けた。
「仕事ができすぎるのも、個々で活動できる営業職とかならいいんだろうなぁとここ一週間くらい考えてました。
預金課では、個々の力よりも〝仲良く〟ってところが尊重されちゃってる気がして」
「瀬名さんの仕事は、これを教えるだけでしょ。そんなところまで見てどうするの?」
少し馬鹿にしたような口調だったけど、横顔は穏やかだった。
「二週間いれば、その職場がどういう雰囲気かは自然とわかります。だから、広田さんがこなしている仕事量を当たり前だと思っている周りに、少し腹が立ちました」